「デリケートな体質の女性には、きつい薬よりも漢方薬が優しくていい」
「薄毛の改善には体質改善からスタートするのが確実」
こんな声を耳にし、漢方薬の薄毛への効果が気になっている方も多いことでしょう。まずは知っているようで知らない漢方の考え方と薄毛への作用についてご説明します。そして漢方医学における薄毛のタイプとおすすめの漢方薬について詳しくご紹介します。
Contents
漢方の考え方からみる女性の薄毛への対処法
中国4000年の歴史を誇る「漢方」というネーミングは良く耳にしますが、どんな理論の元に成り立っているのでしょうか。
また女性の薄毛への対処法と合わせて育毛剤との違いについてご紹介します。
女性の薄毛を体質から変える漢方薬
漢方とは生薬から作られる漢方薬の事だと思われがちですが、そもそもは漢方医学的考え方を指します。そしてその考え方は、個々に応じた体質改善を基礎としています。
漢方は東洋医学に分類されます。一方、病院などで行う治療は西洋医学です。この考え方に大きな違いがあるのです。
西洋医学は「身体の悪い部分を見つけて、悪いところを」治します。一方の東洋医学は「身体の悪い部分を引き起こす原因である体質を」治療します。
起こっている症状がたった1つの原因であり、そこにアプローチすればいいのであれば単純明快です。しかし女性の薄毛や抜け毛を引き起こす原因は1つではありません。栄養不足、血行不良、ホルモンバランスの乱れなど、実に様々な原因が複雑に絡み合っています。
だからこそ、個々の体質や体調に合わせて調合しながら無理なくアプローチできる漢方薬が女性の薄毛対策に適していると言えるのです。
女性用育毛剤と漢方薬の考え方の違い
続いては、女性の薄毛対策として欠かせない女性用育毛剤と漢方薬の考え方の違いをご紹介します。
まずは女性用育毛剤の考え方は以下の通りです。
- 薄毛対策には、髪の毛を育てる頭皮の血行改善が必須
- 薄毛対策には、毛根に十分な栄養をダイレクトに届けることが必須
一方の漢方薬の考えは以下の通りです。
- 薄毛対策には、まずは体質改善で根本的解決が必須
シンプルに表現すると両者がアプローチしようとしている部分の次元が違うことが分かります。しかしどちらの考えも誤りではなく、両者を合わせて考えることが賢明です。
つまり、根本的な体質の改善に加えて育毛の基本である血行と栄養に着目すれば、より確実な薄毛改善が可能になります。
漢方医学から女性の薄毛の原因を紐解こう

もう少しだけ漢方医学についてご紹介します。
漢方医学では身体を1つにまとめて考えます。そして身体に起こる不調を「気」、「血」、「水」などの流れと過不足が引き起こしていると捉えます。それに加えて臓腑=内臓器官の状態を診るのです。
そこで薄毛に関しても主に「気」、「血」、「水」などの流れと過不足を中心に捉えていきます。
ではここからは漢方医学と女性の薄毛の原因についてさらに掘り下げてご説明します。
女性の薄毛の原因は血虚にあり
女性の薄毛の原因の1つ目は「血」にあると考えられます。
「髪は血餘(けつよ)なり」という言葉があります。私たちが食べたものが血となり、その余りが髪となるという意味です。
つまり血液が不足している血虚状態となると、髪の毛に届けられるはずの余りは存在しません。その為、髪を育てるのに必要な栄養素が隅々まで行き渡りません。そこで栄養不足をもらえなかった髪は抜けおち、薄毛が進行するのです。
上記で紹介したのは血液量の不足で起こるメカニズムです。その他にも血液の質の悪化、血行不良の場合も薄毛が起こります。血液の質が悪いと、血液が毛母細胞に届いたとしても健康な髪の毛は育ちません。やがて抜け落ちるような細くて弱い髪の毛になります。また血行不良が起こると、血液量と質が十分でも、毛母細胞に届かないので意味を成しません。
女性の薄毛の原因は気虚にあり
女性の薄毛の原因の2つ目は「気」にあると考えます。
「気」というと髪と全く関係ない話だと感じがちですが、「気」=エネルギーや生命力です。これらが足りていない状態を「気虚」と言います。
エネルギーや生命力は、免疫力や代謝とも関係します。これを髪で考えると、頭皮の新陳代謝がスムーズにいかないことや外部からの刺激に対応できない状態が想定されます。
頭皮は肌の一部ですので一定の周期で新しい細胞に生まれ変わります。この新陳代謝がスムーズに行われてこそ、髪を育てる土壌としての機能が正常に働きます。つまり頭皮の新陳代謝がスムーズに行われないと、悪い土の上に育つ植物のように髪がやせ細り抜け落ちます。
また紫外線や乾燥などの外的刺激から頭皮を守る免疫力があってこそ、髪の毛は太さや艶やかさを保てます。これが失われると、強い紫外線の影響で頭皮が光老化をおこし、薄毛や白髪を誘発します。さらに頭皮が乾燥すると、十分な水分が得られない髪はパサつくのです。
女性の薄毛の原因は腎虚にあり
女性の薄毛の原因の3つ目は「腎」にあると考えられます。
「腎」=腎臓と捉えがちですが、漢方医学ではもっと広く捉え、内臓器官、ホルモン、自律神経にまで及びます。
そして髪は「腎の華(はな)」と表現されます。内臓器官、ホルモン代謝、自律神経バランスなどが正常に機能してこそ、髪は華のように美しく保たれます。
女性の薄毛はホルモンバランスの影響を大きく受けます。また自律神経はストレスで簡単にバランスを崩します。
特に女性ホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンの分泌が減少すると抜け毛が促進されます。さらにストレスは自律神経に作用し血管を収縮させることで、血行障害を引き起こします。その結果、髪には栄養分が送られず薄毛が進行するのです。
ご紹介してきたとおり、女性の薄毛と「血虚」、「気虚」、「腎虚」は決して切り離して考えられない問題です。
漢方医学における自分の薄毛タイプを知ろう

では漢方医学における3つの薄毛タイプをご紹介します。あなたはどの薄毛に該当するのか確認してみてください。
細くて薄い髪は血虚タイプ
まず1つ目は「血虚」タイプです。
このタイプの薄毛は髪が細い為、全体的に薄く見えます。薄毛の進行が比較的ゆっくりである為、気づくのが遅れるのも特徴です。そもそもの髪質が、コシが無い、柔らかい、パサつく方に多く見られます。
血虚タイプの方は、下記のような症状を抱えがちです。
- 冷え症
- 乾燥肌
- 立ちくらみやめまい
- 手足が冷たく、時にしびれる
- 不眠がち
- 不安感が強い
- 年齢の割にシワが目立つ
実年齢より老け髪は腎虚タイプ
2つ目は「腎虚」タイプです。
髪のコシがなくなったり、パサつきがひどい、白髪が目立つという実年齢よりも早くこれらの症状が起こります。その為、周りから見た印象も10歳前後は老けて見られます。もちろん抜け毛も増えます。
このタイプは、身体にも以下のような老化現象が早く起こります。
- 早期閉経
- 不妊
- トイレが近い、残尿感、尿の出が悪い
- 耳鳴り、難聴
- 物忘れ
- 足腰のだるさ
- 午後になると微熱が出る
ベタつきが気になる髪は湿熱タイプ
2つ目は「湿熱」タイプです。
頭皮が皮脂でべたつく、頭が臭う、熱がこもりやすいといった症状が特徴です。身体に熱と湿気が溜まりやすいことから、汗や皮脂の分泌が過剰になりがちです。そして皮脂汚れが毛穴につまり、発育不良から抜け毛が増えるのです。また皮脂と雑菌が混ざり合い、炎症を起こすことも多々あります。
このタイプは髪以外にも以下のような症状を持っています。
- 汗を多くかく
- 口臭や体臭がきつい
- 興奮しやすい
- ニキビができやすい
- 暑さの耐性が低い
「血虚」タイプがどちらかというと痩せ型なのに対し、「湿熱」タイプはぽっちゃりもしくは肥満型の方がほとんどです。
女性の薄毛タイプごとにおすすめの漢方薬
あなたの薄毛タイプがある程度分かったところで、タイプごとにおすすめの漢方薬をご紹介します。
血虚タイプのおすすめの漢方薬
まずは血虚タイプの方におすすめの漢方薬です。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血液を作る働きがある生薬が配合されており、血行促進にも働きます。また貧血の改善やホルモンバランスも整えるため、女性におすすめです。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
体力や気力を補うことで、身体の中から元気にさせ、血行促進に働きかけます。冷え症や貧血、顔色が悪い方にも有効です。
参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
身体をぽかぽかと内側から温める効果があり、冷え症改善にも有効視されています。不妊治療などにも使用される漢方薬です。
鹿茸(ろくじょう)
身体の芯まで冷え切ってしまった重度の冷えを持つ方に有効な漢方薬です。雄鹿のまだ角化してない幼い角を乾燥させたものが含まれています。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ストレスや不安から血行不良が起こる方に使用される漢方薬です。また更年期障害で感じる神経性の症状にも効果的です。
腎虚タイプのおすすめの漢方薬
次に腎虚タイプの方におすすめの漢方薬です。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
腎の働きを促進する生薬を含むとともに、身体を温めることで内臓機能の働きをサポートします。アンチエイジングにも有効だとされています。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
血行が悪く虚弱体質であったり、体力が落ちている時に使用される漢方薬です。食欲を増進させ栄養を吸収しやすい身体へと働きかける為、育毛にも欠かせません。
六味地黄丸(ろくみじおうがん)
泌尿器間の疾患に有効だとされる漢方薬です。また飲み続けることで内分泌系を整える作用があることから「中医のホルモン剤」とも呼ばれます。
何首烏末(かしゅう)
白髪予防に効果的とされる漢方薬である為、老け髪になりがちな腎虚タイプの方にピッタリです。古来中国では不老長寿の薬として使用されていました。
紅雪冬花(こうせっとうか)
抜け毛や白髪が気になる女性に有効な漢方薬です。腎機能を向上させ身体の老化を防ぐ働きがあります。
湿虚タイプのおすすめの漢方薬
次に湿虚タイプの方におすすめの漢方薬です。
瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)
身体に熱を持ちやすい人に効果的な漢方薬です。血流を促進させることで、熱を外に逃がす働きがあります。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
すぐにカッとなったり、のぼせなどの症状を持つ方にお勧めの漢方薬です。熱を冷まし不要な水分を外に取り除きます。
黄芩(おうごん)
炎症や充血、発熱などに有効視されている漢方薬です。また抗酸化作用もあることから、頭皮の炎症にも有効です。
漢方薬は、単体で服用することもありますが、混ぜあわせて使用するケースが多く見られます。また個人の体質改善に使用することから、配合量も個々で異なります。
漢方薬自体は自然由来のものから作られている為、基本的に副作用はありません。しかし漢方薬を扱っている調剤薬局でブレンドしてもらうのが最も安心できる利用方法です。
じっくりタイプの漢方に育毛剤の薄毛対策をプラスしよう
漢方薬は効果が緩やかであることが特徴です。これは副作用が少ない要因でもありますが、なかなか効果が見られないと不安にもなるものです。
そこでじっくりと体質改善をしながらも、女性用育毛剤が持つ薄毛対策を取り入れるのがより効果的です。
女性用育毛剤で直接頭皮にアプローチする薄毛対策
漢方薬と女性用育毛剤の考えの違いのところでもご紹介しましたが、女性用育毛剤は頭皮に直接作用します。
食べ物やサプリメントから髪を育てる栄養成分を摂取することはもちろん必要です。ただしこれらも漢方薬と同様で作用は緩やかです。胃で消化され、内臓器官などの必要な部位に栄養素が配布された後に、命に別条がない髪や爪、肌などに栄養素が届けられる為です。
一方、女性用育毛剤はというと頭皮に直接塗布する為、頭皮から吸収した栄養素は血液の流れにのり、最短距離で頭皮内の細胞へと届けられます。
また食べ物から摂取する栄養素とは違い、胃酸などの影響を受けることはありません。その為、摂取した状態とほぼ同じ状態の効果を保つことができます。
女性が育毛剤を選ぶ際に、意識してほしいのが有効成分はもとより、頭皮に優しいことです。漢方薬で優しくアプローチしているにも関わらず、強い刺激で邪魔しては元も子もありません。
無添加、無着色、無香料の女性用育毛剤を基本としてください。また薄毛に向かう頭皮は非常に刺激に弱いものです。アレルギーパッチテストも忘れずに行ってください。
頭皮の血行促進に女性用育毛剤をプラスする
女性用育毛剤を使用することで得られるもう1つの効果は、頭皮の血行促進です。血流がスムーズでないと栄養が毛母細胞まで届けられないことは前述のとおりです。
女性用育毛剤には上記でご紹介した栄養素はもちろんのこと、血行促進に働きかける有効成分も含まれています。
さらに女性用育毛剤には頭皮環境を整え、新陳代謝を促進する、頭皮の保湿やフケ・かゆみ防止など様々な効果が秘められています。
多くの効果を狙うことが悪い訳ではありませんが、確実に薄毛を改善させるためにはシンプルに栄養補給と血行促進に的を絞るのも1つの方法です。
まとめ

薄毛にお悩みのあなたに、漢方薬の働きや薄毛に対する効果についてご紹介しました。一人一人の体質や症状にあって調合できるのは大きな安心感につながるものです。もしかしたら自分に合わないかもという不安も払拭できますね。
体質改善とプラスアルファの育毛剤効果を取り入れながら、じっくり着実にかつ確実に薄毛対策を行いましょう。